「あの、どこか痛みますか?」

「いや、特に痛まんよ」
 
そう言ったおじいさんは、私を安心させるように笑顔を向けてくれた。

おじいさんの言葉を聞いて安堵した時、その人の顔に見覚えがある事に気がつく。

――じぃじに似ている。

ふとそう思った時、前の壁に掛かっていたカレンダーが目に入った。そしてそのカレンダーに書いてあった年号を見て目を見開く。

「平成十六年……七月三十一日……土曜日?」
 
目の前に見えるカレンダーにはそう記されていた。

いやいや、今は平成三十年で今日は八月四日の土曜日のはずだよね? そう思った私は確認を取るようにおじいさんに問いかける。

「あ、あのっ! 今って平成三十年の八月四日ですよね?」

「はい?」
 
私の質問に対しておじいさんは小さく首を傾げた。その反応を見た私の頬に、汗が一滴伝り畳の上に落ちた。

よく考えてみたら、ここには私とお父さん以外の人は居なかったはずだ。

手伝いに来る人が居るとも聞いていない。……じゃあ、この人はいったい?

「あの、もう一つ聞いても良いですか?」

「何かね?」
 
私は唾を飲み込んだ後、思い切っておじいさんに聞いてみた。

「あなたは……三留羽一茂(みとばかずしげ)さん、ですか?」

「そうじゃが、よく儂の名前が分かったのう?」

「で、ですよね〜……」
 
顔を引きつらせながら心の中で私は頭を抱えた。