翌日、仕事場に着いてすぐに親方にお礼を言った。


「昨日は無理言ってすみませんでした! でも、おかげでいい式が見れました。本当にありがとうございます!」

「なーに、気にするな! その代わり、今日からはまた死ぬ気で働いてもらうからな!」


親方は豪快に笑い、俺の背中をバシッと叩いて意地悪そうな表情を見せた。


「はい……」


「なんだなんだ! 男のくせにはっきりしねぇ返事しやがって! 俺はそんな風に育てた覚えはねぇぞっ!」


相変わらず大声で話す親方は、豪快な雰囲気に反して心なしか心配そうにしている。


「いや、すみません。ちょっと疲れてたんで……」


俺は煮え切らない返事をして、これ以上詮索されないように性急に作業を始めた。
親方は、そんな俺のことを怪訝な顔で見ていた。


親方の視線が気になってしまって、一日中ずっと監視されている気分だった。
息が詰まりそうな雰囲気の中で、ようやく仕事を終えた。


親方の視線を一日中感じていたから、今は少しだけ開放感がある。
それでも、まだ安心はできない。


「おい、ちょっといいか?」


その予想通り、帰ろうとしたところで親方に呼び止められてしまった。
こういう時の親方は厄介で、絶対に逃げることはできないと知っているから、俺はできるだけ自然な笑顔で振り向いた。


「なんですか?」

「……ちょっと付き合え」

「あの……俺これからまた病院に行くんで、あんまり時間なくて……」

「ああ、わかってる。そんなに時間は取らせねぇよ」


親方は俺の返事を聞く前にどこかに向かって歩き出し、俺は仕方なくそのあとについて行くしかなかった。