陽が傾き始めた頃、ようやく信二たちが病院に着いた。
信二は病室に入って来るなり、不安げな表情を見せた。


「美乃は⁉」

「今は薬が効いて眠ってる。とりあえず、落ち着いてるみたいだよ」

「そうか、よかった……。遅くなって悪かったな。結局、全部お前に任せっ切りで……」

「そんなこと気にするなよ。それより広瀬たちは?」

「由加の両親には帰ってもらった。由加はあとで来るって」

「そうか」


俺たちが話していると、美乃の両親が病室に入ってきた。


「染井君、すまなかったね……。今、そこで先生と内田さんから話を聞いてきたよ。とりあえず、もう落ち着いたみたいだね」


美乃の父親は、眠っている美乃を見て安堵の表情を浮かべた。
彼女の母親もホッとしたのか、ベッド脇の椅子に腰を下ろして美乃を静かに見ていて、俺と信二は外に出て話すことにした。


「あいつ、やっぱり無理してたんだな……」

「お前らの結婚式なんだ、なにがなんでも行きたかったんだろ? だから、そんな顔すんなよ! 美乃に怒られるぞ!」


落ち込む信二に、できるだけ明るい笑顔を見せる。


「やけに元気だな……。染井も、最近は随分落ち込んでただろ?」


信二はぎこちない笑顔を取り戻しながら、不思議そうに首を傾げた。


「さっき、内田さんに叱られたんだ……。でも、そのおかげで頑張ろうって思えたよ。お前にも心配掛けて悪かったな」


俺は、内田さんとのやり取りを一部始終話した。


「そっか……。そうだよな。よしっ、俺も頑張らないとな!」

「ああ。俺らが美乃にできることを考えよう!」


俺と信二はお互いの拳を突き出し、パンッとぶつけ合った。
高校生の時によくしていた行為にどこか照れ臭くなり、顔を見合わせて自分たちの情けなさを笑った。