「あら。美乃ちゃん、今眠ったわよ。薬が効いたみたいね」


内田さんは俺に気付いて、優しい笑顔を向けた。
今まで不安と緊張でいっぱいだった俺は、その表情にほんのわずかにホッとする。


「せっかくのドレスなんだけど、苦しいんじゃないかと思って私が着替えさせたの」

「そうですか…………」


内田さんにお礼を言いながらも、視線は美乃から離せない。
ドレス姿だった彼女は、見慣れたパジャマを身に纏っている。


「大丈夫よ」


すると、内田さんは俺の不安を察したのか、俺の肩に手を置いて優しく微笑んだ。。


「美乃ちゃんは、こんな幸せな日にいなくなったりしない。きっと疲れただけだろうから、今はゆっくり寝かせてあげましょう」


気休めの言葉だったのか、本心だったのかはわからない。
それでも、その言葉は俺の不安をほんの少しだけ和らげ、わずかに安心させてくれた。


「それじゃあ、私は三十分後にまた様子を見にくるから、美乃ちゃんに付いててあげてね。なにかあったらすぐに呼んでね」

「はい……」


内田さんが病室から出て行くと、美乃とふたりきりになった。
まだ昼過ぎだと言うのに、外はやけに静かだった。


俺はベッド脇の椅子に腰掛け、美乃の手をそっと握った。
彼女はさっきまでよりもつらさが和らいだのか、小さな寝息を立てて眠っている。


ちゃんと、生きてる……。


顔色は悪いけれど、美乃の呼吸は確かに聞こえる。
彼女の手の温もりを感じたことでようやく緊張の糸が解けた俺は、どうやらそのまま眠ってしまったらしい。


誰かがドアをノックする音に反応して、自分が微睡んでいたことに気付いた。


「さっきも来たけど、一緒に眠ってたわね」

「すみません……」


病室に入ってきた内田さんは、にっこりと笑った。