「レンタルでいいのか?」


「一度しか着ないもん! レンタルで充分だよ!」


なにげなく訊くと、美乃が笑顔で頷いた。


『一度しか着ない』
そこに深い意味はなかったのかもしれないけれど、俺にはその言葉が重かった。


「私のイメージって何色かな?」

「え? あ、えっと……」


胸の奥が締めつけられそうになっていた俺は、慌てて笑顔を繕う。


「ピンクかな?」


俺が持ってるイメージだと、彼女のイメージは淡いピンクだった。
名前もそうだけれど、白い肌とか長い睫毛が優しい色を連想させる。


「ピンクね?」

「淡いピンクな」

「そんなドレスありますか?」


アドバイザーは奥に入ると、淡いピンク色のドレスを持ってきて見せてくれた。
美乃は広瀬と奥の部屋に行き、試着をすることにした。


「さすがに男だけだと浮くな……」

「確かに……」


苦笑した信二の言葉に、コクコクと頷いた。
明らかにさっきよりも目立っている中、俺たちは男ふたりだけでしばらく待たされた。


「できたよー!」

「美乃は?」


先に着替えて出てきた広瀬に訊くと、後ろから美乃が恥ずかしそうに姿を見せた。
淡いピンクのドレスを着てストールを羽織った彼女が、俺を見て照れたように笑う。


俺は、不覚にもときめいた。
純白なドレスにも劣らない美乃のその姿は、一瞬で俺に視線を釘付けにした。


「どう、かな……?」


不安なのか、美乃が眉を下げがちに俺を見上げている。


「あっ、似合ってるよ……」


今は、それだけ言うのが精一杯だった。


「絶対これがいいよ! よく似合ってるもん!」

「兄ちゃんもそう思うぞ!」


広瀬と信二に褒められて照れ臭そうにしている美乃を、ただただ見つめていた。