「その代わり、あとでみっちり働いてもらうからな!」

「はい! ありがとうございます!」


親方は豪快に笑いながら、俺の背中をバシッと叩いた。


「彼女も一緒なんだろ! ふたりでしっかり祝ってきてやれ!」


親方には、美乃のことを話していた。
俺たちが付き合っていることも、彼女の病気についても知っている。


詳細は話していないけれど、親方にはある程度のことは知っていてほしかった。
俺のことを息子のように思ってくれ、仕事を教えてくれた親方を、俺は心から信頼しているから。


「まぁ、一度くらいは彼女に会わせてくれよ!」

「お疲れ様でしたっ!」


親方は豪快に笑い、「お疲れさん」と言った。
俺は親方の背中に頭を下げ、軽い足取りで家に帰ったあとで身支度を整え、病院に急いだ。


病室には、予想通り信二と広瀬がいた。
報告を受けたらしい美乃は、満面に笑みを浮かべていた。


「いっちゃん! お仕事お疲れ様!」

「おぉ〜、お疲れ! さっきは仕事中なのに悪かったな!」

「ああ、いいよ! それより、休みがもらえたぞ」

「本当に⁉ 私、絶対にダメだと思ってたのよ〜。二週間後なんて、あまりにも突然過ぎるし無理だって……。でも、よかった! なにがあっても来てよね!」

「サンキュー、染井!」

「一緒に行こうね、いっちゃん!」

「ああ」


休みが取れたことを報告すると、三人とも心底喜んでくれた。


「明日、美乃ちゃんが外出許可をもらえたら、ドレスを見に行くつもりなのよ」

「俺も一緒に行くんだけど、染井も行こうぜ!」

「ああ、明日は休みだしな。もちろん行くよ」

「ダブルデートでドレスの下見なんて、なんだかすごいよね! ワクワクしちゃう!」


ふふっと笑った美乃が、嬉しそうに声を弾ませた。