それから数日後、信二から電話が掛かってきた。


『急なんだけど、結婚式の日取りが決まったんだ。二週間後の土曜に式を挙げる』

「本当に急だな……」


突然のことに驚きながらも、理由は安易にわかる。


「ああ、最短で二ヶ月後だったけど、キャンセルが出たらしくて昨日式場から連絡があったんだ。急に決まったことだから親戚も呼ばずに、お互いの家族とお前だけ招待して式を挙げることにしたから」

「二週間後か……。俺、仕事休めないかもしれないな」

「だよな……。俺もそう思って迷ったんだけど、美乃のことがあるからさ……」

「わかってる……。なんとか調整できるように、頼んでみるよ」

「悪いな……」

「なに言ってるんだよ! おめでたいんだから、謝るなよ!」

「そうだな」

「ああ! じゃあ、俺は仕事に戻るから」


電話を切ったあと、急いで仕事に戻った。
そして、仕事を終えてから現場監督を引き止めた。


「すみません、親方。ちょっといいですか?」

「おうっ! どうした?」


現場監督はこの仕事を始めて四十年以上のベテランで、年齢は五十代後半だ。
みんなからは、『親方』呼ばれている。


高校卒業間もない俺を快く雇ってくれ、出会った頃からずっと父親のように接してくれている。
父親を早くに亡くして母子家庭で育った俺も、現場監督のことを『親方』と呼び、本当に慕っている。


「この時期にお前が欠けるのはなぁ……。人手も足りねぇし……」

「そうですよね……。すみません」


予想通りに微妙な反応を返され、俺は眉を下げた。
わかってはいたけれど、信二と広瀬の結婚式は行きたかった。


「ああ、待て! わかった、休んでいいぞ!」

「えっ⁉」


絶対に無理だと思っていたから目を見開いてしまったけれど、親方は人情溢れる人だから俺の気持ちを察してくれたんだろう。