「かんぱーいっ!」


病院の近くの居酒屋で、ビールが注がれたジョッキを鳴らした。


「本当におめでとう! 俺も嬉しいよ!」

「サンキューな。美乃のことも、今回のことも……。お前には本当に感謝してるよ」

「なんだよ、改まって……」

「今回のことは、本当に染井のおかげだよ。染井の言葉で、私は考え直したんだから! 本当に感謝してる」

「そっか、よかったよ……。実はさ、余計なこと言ったかもって、ずっと気になってたんだ」

「バーカ! 俺らはそんなこと気にしてねぇよ!」

「そうよ! バカね!」


俺の心配を余所に、信二も広瀬も笑顔で否定してくれた。
高校を卒業したあとはふたりと疎遠になっていたけれど、また再会できてよかったと心底思う。


俺たちは他愛もない話をして、何時間も飲み続けた。
まるで、高校時代に戻ったかのような楽しい時間だった。


「あいつも結婚したいだろうな……」


不意に眉を下げて微笑んだ信二が、ぽつりと呟いた。


「そうね。口にはしないけど、本当は『いつかは……』って夢見てるんじゃないかな……」

「そうだよな……」


ふたりの言葉に、ため息混じりに頷いた。
さっきまでの賑やかな雰囲気に反し、しんみりとした空気が流れ出す。


「あいつさ……入院してから不自由なことばっかりなのに、絶対に不満を漏らしたりしないんだよな……」

「そうだよね……。美乃ちゃんって周りを気遣かってばっかりで、自分のことはいつも後回しなんだもん」

「俺たちが喧嘩した時も、いつも仲を取り持ってくれてたよな……」

「うん……。美乃ちゃんがいなかったら、私たちはとっくにダメになってたよ……」

「俺の知らない三人の時間があるんだな」


信二と広瀬の会話に、眉を寄せて微笑む。