美乃も信二も、髪は黒い。
信二なんてふざけた性格でバカなことばかり言っているけれど、実はそれなりの企業に勤めているサラリーマンだ。


俺は特別派手じゃないけれどかなり明るめの茶髪で、最近はどちらかというと金髪に近い。
それに、耳には三つのピアス。
右には二つで、左には一つ。


その上、職業は鳶だから仕事でツナギを着ている時は、結構ヤンキーっぽく見えるのも自覚している。
普段の服はそうでもないとはいえ、周りからは派手に見えるのかもしれない。
ここまでを総合すると、美乃の父親から見た俺は完璧なヤンキーの部類だろう。


「やばいな……」

「いっちゃん、なにがやばいの?」

「え? いや、別に……」

「やばいって言ったじゃない!」

「なんでもないから!」


独り言だった言葉を拾われてしまい、必死に冷静を装う。
本当のことを口に出すのが恥ずかしくて、咄嗟に笑みを繕った。


「もう! 言いたいことがあるなら、はっきり言ってよ!」


「そうだぞ、染井! 我慢はよくない!」

「ちゃんと言って?」


広瀬と信二が後ろから口を挟み、美乃は心配そうに俺を見ている。
仕方なく、深呼吸をしてからゆっくりと口を開いた。


「だから……やばいんじゃないか、って思ったんだよ」

「なにがやばいの?」

「俺……印象悪そうだろ……」


そう付け足すと、みんながようやく察したらしい。
直後には、三人ともお腹を抱えて笑い出した。


「ありえねぇ! 染井がそんなこと気にするキャラかよ!」

「可愛いとこあるじゃない!」

「うるさいっ! ああ、もうありえねぇ……。だから言うのが嫌だったんだよ! てか、お前ら降りろ!」


笑い過ぎて涙を浮かべている信二につられるように、広瀬もケラケラと笑っている。
後ろで笑い続けるふたりを、ルームミラー越しに睨んだ。