病院に戻ると、信二と広瀬が来ていた。
外出許可された時間は過ぎていなかったけれど、ふたりは予定よりも帰りが遅かった俺たちを心配していたらしい。


「連絡ないからどうしたのかと思ったわよ!」

「邪魔しないように、ずっと我慢してたんだぜ!」


呆れたように言いながらもニヤニヤと笑う広瀬も、こっそり俺に耳打ちをする信二も、いつもなら鬱陶しく思うのかもしれないけれど、今はそんなやり取りすら楽しい。


「なーんか変! ふたりとも幸せそうにしちゃって!」

「そういえば、ふたりとも嬉しそうだな」

「……あら、美乃ちゃん、それどうしたの? 可愛いじゃない」


からかうように笑っていた広瀬が、ふと美乃のネックレスに気付いた。


「素敵な彼氏さんからの誕生日プレゼントなんだって」


すると、彼女は俺をチラリと見たあとで、飛び切りの笑顔と弾んだ声で答えた。


「えっ⁉」

「だって、さっき店員さんがそう言ったんだもん!」


声を揃えて驚いた俺たちに、美乃が楽しげな笑みを見せる。
一瞬だけ期待してしまった俺は、ガッカリしたけれど、今はそれ以上に幸せで、そんな気持ちはすぐに吹き飛んだ。