「仕事は大丈夫だったの?」

「ああ、やっと梅雨の皺寄せが終わったんだ。これからはちゃんと休みも取れるよ」


ようやく外出許可が出た美乃を連れて、久しぶりにあのカフェに来ていた。
一ヶ月以上ぶりの外出だけあって、彼女はいつもよりもよく笑っている。


「お兄ちゃんと由加さんも一緒だったらよかったのにね。ふたりとも休日なのに、急に仕事なんて……」


美乃には内緒だけれど、信二と広瀬は口裏を合わせてわざと一緒に来なかった。
あいつらなりの協力らしく、ふたりから電話でこのことを聞かされた時には、『余計なお世話だよ』と言いながらも笑みが零れた。


信二と広瀬も、きっと今頃はデートを楽しんでいるんだろう。
あとで彼女に知られたら怒られるかのしれないけれど、こうしてふたりきりで過ごせるようにしてくれた信二たちには感謝している。


前にも、美乃とは何度かふたりだけで外出したことはあったけれど、今日は今までで一番嬉しい。
たぶん、自分の気持ちに気付き、彼女も俺の気持ちを理解してくれたからだ。


美乃に俺の想いを受け入れてはもらえなくても、こんな風に好きな人と一緒にいられて幸せだった。
彼女と過ごせる二時間を大切に噛み締めながら、俺たちはまるで恋人同士のように無邪気にはしゃいだ。