「自分でも、自分のしつこさにびっくりしてるよ。面倒なことは嫌いな俺が、こんなにも粘り強いなんてな」

「面倒なことが好きな人なんているの?」

「さぁ? でも、美乃みたいなタイプはそうかもな。お前、世話好きだろ?いや、お節介なだけか?」

「ちょっと! それ、失礼だよ!」


拗ねてそっぽを向いた美乃を見て、笑みが零れた。


「もうっ‼ むかつく〜!」


彼女は頬を膨らませ、病室を出た。


「どこ行くんだよ?」

「散歩っ‼」


慌てて追いかけると、怒り混じりの言葉が返って来た。


美乃はこの間倒れて以来、また外出を禁止されていた。
しばらくは病室で絶対安静の生活だったけれど、数日前にやっと屋上と庭へ行くことだけは許可が出た。


こんな風に不自由を強いられる生活の中でも、美乃は不満を漏らすことはない。
屋上や庭だけとは言え、彼女にとっては息抜きになったんだろう。


外に出られるようになったことでまた笑顔を取り戻した美乃は、自分から過去や病気のことを少しずつ話してくれるようになった。
そんな彼女の話を、俺はいつも一字一句漏らすことなく真剣に聞いていた。


「最初は、ひどかったんだよ。病気のことは知ってたけど、十五歳で余命を宣告されて……なかなか受け入れられなかった。毎日泣いて、周りに八つ当たりしてたな……」

「でも、今は泣き言を言わずに、ちゃんと頑張ってるだろ」

「お兄ちゃんがね、『笑顔でいろ』って言ったから」

「信二が?」


美乃はふっと笑みを落とし、絵に描いたような澄んだ青空を仰いだ。