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美乃には『来ないで』と言われたけれど、俺は再び病院に通い詰めた。
『やっぱりただの同情だよ』
『もう来ないでって言ったじゃない』
『いっちゃんには会いたくない』
その度に色々なことを言われたし、こんな台詞は散々聞かされたけれど、俺はなにを言われても絶対に引かなかった。
『自己満足の愛情だね』
時には、彼女らしくない冷たい口調でひどい言葉を言い放たれたこともあったけれど、こんな言葉ですら少しだけ嬉しく感じていた。
美乃が自分の弱さを俺に見せたのはあの時が初めてだったし、どんな些細なことでも精一杯受け止めたかった。
例えそれが八つ当たりだったとしても、彼女の気持ちを少しでも知りたかったから……。
俺のしつこさに諦めるしかないと思ったのか、美乃は次第になにも言わなくなった。
俺はどんなに忙しくても彼女に会いにいき、お盆に入る頃には毎日欠かさず病院に通うことが日課になっていた。
「最近は『来るな』って、言わなくなったな」
「だって、どうせダメって言っても来るんでしょ。なにを言っても毎日絶対に来るんだもん……。疲れちゃった」
美乃は、完全に諦めたようにため息をついた。
本当は面会を拒否することもできたのに、それをしないのは彼女の優しさなのかもしれない。