美乃の傍にいたい。
彼女を支えたい。
今までに感じたことのない、真剣で強い想い。


俺は視線を逸らさずに、ずっと美乃を見ていた。
隣にいる信二と広瀬は、言葉を忘れてしまったかのように黙っている。


「それは同情だよ……」


程なくして視線を逸らした美乃が、冷たく言い放った。


「どうしてそう思うんだ?」


「昨日私が目の前で倒れたから、びっくりしてそう思っただけだよ。私は病人なの。恋はしない」


はっきりと言い切った美乃の瞳は、悲しげに揺れている。
だけど、俺は一歩も引くつもりはない。


「違う……。俺は美乃が好きだ。確かに、きっかけは昨日のことかもしれない。でも、俺は同情で恋愛ができるほど優しくないよ」


きっかけは昨日のことで、気付いたのはたった今だけれど、俺は同情で恋愛ができるほど、優しい人間じゃない。
そのことは信二と広瀬も、そして美乃自身も、たぶんわかっているはずだ。
彼女が今までに自分から病気のことを話さなかったのは、それを理解しているからこそ、近づき過ぎないようにどこかで一線を引いていたからなのかもしれない。


いつの間にか、美乃は静かに泣いていた。
彼女の泣き顔を見たのは初めてで、思わず言葉を失ってしまう。


「私はもうすぐ死ぬんだよ……」


そんな俺に追い討ちをかけるように、彼女が涙混じりに呟いた。
俺はこのあと初めて、残酷で悲しい真実を知らされた――。