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翌日、仕事を終えてから病院に向かった。
まだ自分の気持ちに結論を出せていなかったけれど、そんなことは言っていられない。


昨日はあのまま広瀬と別れ、ひとりで飲みに行った。
酒には強いのに今日は二日酔いで頭痛がするし、昨日のことを考えるとますますその痛みがひどくなったけれど、美乃が心配で仕方なかった。


仕事中も何度もぼんやりして、現場監督の三島(みしま)さんに散々怒られてしまった。
俺は滅多に注意されることがないし、三島さんには働き始めた頃からずっとお世話になっているから、挙げ句の果てには怪訝な顔をされたほどだ。


病院に着いて中に入ると、すぐに信二と広瀬の後ろ姿が見えた。


「信二!」


思わず大声を出してしまった俺に、信二がいつものように笑って見せる。


「おう、染井! 昨日はありがとな」

「美乃は?」

「もう大丈夫だ。病室も元の場所だよ」


病室に入ると、ベッドの上で窓の外を見ていた美乃が振り向いた。


「調子はどうだ? 大丈夫か?」

「うん。あの、心配かけてごめんなさい」


信二の質問に頷いた美乃は、俺と広瀬を見ながら申し訳なさそうに眉を下げた。


「謝らなくていいのよ。私の方こそ、気がつかなくてごめんね。もっと早く病院に戻ればよかったね」


美乃は首を小さく横に振ったあと、俺を見ながらいつものように笑った。


「びっくりしたでしょう?」


俺はなにも言えなくて、ただ黙って彼女を見つめていた。