沈黙が続いたあと、再び広瀬が口を開いた。


「美乃ちゃんのこと、好きなの?」


あまりにも突然過ぎる質問に、目を見開いて戸惑った。


「あいつは……妹みたいなもんだよ」


いつものように答えたけれど、明らかに動揺していた。
広瀬は、そんな俺の態度を見逃さなかったんだろう。


「さっき、パニックになってたじゃない。あんな染井、初めて見た……」


確かに俺は常に冷静なタイプだし、性格もどこか冷めている。
それなのに、さっきは本当に動揺したし、正直に言うと今もまだ平静を取り戻せないままで、あれからずっと不安が消えない。


「それに美乃ちゃんといる時は、本当に楽しそうにしてるじゃない」


核心を突かれた、と思った。
それは、自分自身でも感じていたことだったから……。


俺は美乃といる時がなによりも一番楽しかったけれど、それは彼女のことを妹のように可愛がっているからだと思っていた。
だけど、勝手にそう思い込んでいただけで、本当は違ったのかもしれない。


美乃が好き……?


自分自身に問いかけてみたけど、結論は一向に出ない。


「私の勘だし、違うなら別にいいんだけどね」


広瀬にそう言われても、美乃への気持ちを否定することはできなくて……。

「わからない……」

代わりに、そんな正直な気持ちが口から出た。