病院に着くと、美乃を担当している菊川(きくかわ)先生や内田さんが入口で待機していて、先生や看護師に口々に呼びかけられていたけれど、彼女はまったく反応しない。
緊迫した雰囲気が漂うスタッフたちが処置室に消え、俺と広瀬は廊下で待っていた。


「由加、染井! 美乃はっ!?」

「まだ、中に……」


直後、汗だくで走ってきた信二を見た広瀬は、口を開くと同時に泣き出してしまった。
美乃の両親もそのあとすぐに駆けつけ、しばらくして菊川先生と内田さんが処置室から出てきた。


「先生っ……! 美乃は!?」


不安そうに訊く美乃の母親に、先生が笑みを向ける。


「なんとか落ち着きました。もう大丈夫ですよ。ただ、今日はICUで様子を見ます」


ホッとしたのは束の間のことで、全員が不安げな表情になった。
信二や両親に口々にお礼を言われたけれど、ほとんど聞いていなかった。


「お前たちは、今日はもう帰った方がいい。ありがとな」


信二に促されて広瀬と一緒に病院を出たものの、正直帰りたくなかった。
家に帰ったって、落ち着かないに決まっている。


「ちょっと話さない?」


話す気にはなれなかったけれどひとりでいるのも嫌で、広瀬の誘いに乗って近くの公園に行った。
ベンチに座って公園を見渡すと、噴水の周りには楽しげに過ごすカップルや高校生がいた。