俺が思ってる以上に、美乃は深刻な病気なんじゃないのか……?


今さらそんなことに気づいて、美乃を避けていた自分に苛立ちが募った。


そもそも、俺は美乃から『好き』とか言われていないし、あの時のことだって勘違いだったのかもしれない。
実際、今だって彼女はいつもと変わらない。


「いっちゃん! 眉間にシワ! また同情?」

「違う違う! これからどうしようかな、って思ってたんだ! 今日は暇だからな」


不自然にならないように、笑顔を繕う。
同情のつもりはないけれど、俺が考えていることを言えば彼女を傷つけるような気がしたから。


「病院に来れば?」

「そうだね! あとでお兄ちゃんも来るし、きっと喜ぶよ」

「じゃあ、そうするよ」


つまらない考えを捨てた俺は、迷うことなく色瀬と美乃の提案に笑顔を見せた。


「そういえば信二は?」


休日の外出なのに信二の姿がないことを不思議に思って訊くと、美乃がグラスを置いてから口を開いた。


「今日は休日出勤だよ。お兄ちゃん、この時期は忙しいんだって!」

「おかげで、女同士で楽しいよね〜!」

「うんうん! お兄ちゃん過保護だから、すぐに『あれはダメ』とか言うんだもん!」

「そうそう。あそこまで過保護だと、美乃ちゃんものんびり楽しめないわよね!」

「この間なんて、下の売店に行くのもダメって言われたんだよ!」

「あの時、喧嘩になってたもんね。信二はシスコンだから、今も仕事しながら悔しがってるんだろうな」


広瀬の言葉で俺と美乃はケラケラと笑い、周りから注目を浴びてしまった。