まさか……。美乃は俺のことが好き、なのか……?


それは、とてもじゃないけどれど、口にできないことだった。
気づけば気まずい雰囲気に包まれていた俺たちは、ほとんど言葉を交わすことなく病院に戻り、そのまま逃げるように病室を出て家に帰った。


俺は鋭くはないかもしれないけれど、そこまで鈍くもないつもりだ。
自分で言うのはおこがましいけれど、ルックスは悪くない方だろうし、おかげで女で苦労したことはない。


女が考えてることはいつもだいたいわかったし、学生時代に恋愛絡みで振り回されて苦い経験をしてからは、波風を立てないようにしていた。
それでも面倒なことになりそうな時は、トラブルになる前に別れた。


面倒なことは嫌いだし自分のペースで生活したいのに、恋愛は束縛や嫉妬だらけ。
そんな俺は、きっと恋愛に向いていない。


暇を埋める存在として何人かと付き合ってきたものの、言うまでもなく長続きすることはなかった。
ただ、それは今までに本気になれる女がいなかったのも、理由のひとつだと思う。


だから、信二みたいにひとりの女とずっと一緒なのは本当にすごいと思うけれど、俺には到底真似できそうにない。