「これ……」


目を見開いて呟くと、信二が穏やかに笑った。


「それ、お前だよな?」


俺はゆっくりと頷き、信二の目を真っ直ぐ見た。


「俺も驚いたんだ。美乃の遺品を整理した時に、出てきたんだけどさ。中を見たらお前の写真で……。全部水族館で撮ったものだったのに、最後の一枚だけは結構前のやつだっただろ? でも、そこに貼ってあるから偶然じゃないと思うんだ」


俺もそれを確信し、再びノートの表紙に視線を落とした。
美乃がこの写真を撮った理由はわからないけれど、俺だとわかっていて撮ったんだということは理解して、胸の奥から込み上げるなにかに泣きたくなりながら信二を見つめた。


「さっきさ……夢を見た、って言っただろ?」

「ああ」

「俺、美乃が亡くなってから、ずっと考えてたことがあって……」


そこで言葉を止め、息を大きく吐き出した。


「あいつ……ちゃんと幸せだったのか、って……。考えても仕方ないのに……ずっと考えてるんだ……」

「お前……」


言葉に詰まって俯いた信二は、たぶん自分がいくら否定しても俺が納得できないことをわかっていたんだろう。
そんな信二を見ながら、小さな声で話を続けた。


「両想いだったのかもしれないけど……美乃は、もともと恋愛はしたくなかったんだ……。だから……」


きっと、正しい答えなんてない。
それでも繰り返し自問してしまうのは、彼女が本当に幸せだったのかわからないから。