− ……ーン、ピンポーン


「ん……」


いつの間にか、眠っていたらしい。
ランニングから帰ってきて、美乃のことを思い出していたはずなのに……。


どこからが夢だったんだ……?


ぼんやりと考えている最中、インターホンが鳴ってることにやっと気付く。
まだ重い体を起こして、玄関のドアを開けた。


「はい……」

「染井っ‼」


ドアの前にいたのは、血相を変えた信二だった。


「……お前、どうした?」

「どうした、じゃねぇよ! 昨日の電話で、来るって言っただろ?」

「ああ……」


信二にそう言われて、ようやく昨日の電話のことを思い出した。


「ああ、じゃねぇよ……」


脱力したようにその場にしゃがみこんだ信二を、部屋に招き入れた。


「まったく……。電気は点いてるのに何回インターホン押しても出てこねぇし、あまりにも静かだからびっくりしたんだぞ……」


信二は床に座り込むなり、呆れたように深いため息をついた。


「あ〜、ごめん……。寝てた……」

「寝てたぁっ⁉」

「ああ、朝からずっと……」

「もう夜なんですけど……。どれだけ寝てるんだよ!」

「ランニングから帰ってきてからだから……十時間くらい、か……」

「寝過ぎだろ!」


俺の睡眠時間を聞いて、信二は唖然としていた。
あまりにも寝過ぎたことに自分でも驚いて、苦笑が零れてしまう。


「確かに……」

「まぁ、お前も疲れてたんだろ。それだけ寝たなら、ちょっとは疲れも取れたんじゃねぇの?」


信二は笑顔でフォローを入れ、俺の背中をバシッと叩いた。
その痛みに、眉をしかめる。