「美乃っ‼」

「美乃ちゃんっ……!」


程なくして駆け付けた信二と広瀬が、目の前の光景を見て呆然と立ち尽くした。


「親父っ‼ 美乃は大丈夫なんだよな⁉」


すぐに我に返った信二は、父親に掴み掛かった。


「先生っ‼ 美乃は助かりますよねっ⁉」


なにも言わない父親に痺れを切らしたのか、信二が今度は菊川先生に向かって叫んだ。
いつの間にか、美乃の母親と広瀬が肩を震わせて泣いている。


信二は、どうしてあんなに必死なんだ……?
ふたりは、どうして美乃を見て泣いてるんだ……?
これじゃあ……。
これじゃあ、まるで美乃が死ぬみたいだろ……?


「やめ、ろよ……」


信二、そんな事するな……。
ふたりともそんな風に泣くなよ……。


頭がおかしくなりそうだ。
だって、昼間は笑ってくれて、公園まで散歩もできた。


色々話して、笑い合って……キスだってした。
さっきまで、俺の腕で美乃を抱き締めていたのに……。


「やめ、ろ……っ!」


必死に声を絞り出し、信二を睨んだ。


「えっ……?」


信二と広瀬、美乃の両親が、俺の方を振り返る。


「……っ、やめろよっ‼ 美乃は……さっきまで、元気だったんだよっ‼ 今日は体調がよくて……内田さんも一緒に散歩までしたんだっ‼ だからっ……!」


次に言いたいことはちゃんとわかっているのに、言葉に詰まってしまった。
先生や内田さんまで、俺を見ながら悲しそうな顔をしたから……。


菊川先生と看護師たちは、いつの間にか治療をやめていた。


「な、んでっ……! なんで治療をやめるんだよっ‼ なにしてるんだよっ⁉」


目の前の光景に目を見開き、すぐに先生に掴み掛かる。