いつの間にか眠っていた俺は、聞き慣れた着信音で目を覚ました。
寝ぼけ眼で手を伸ばし、重い瞼をこじ開けるようにしてスマホのディスプレイを確認する。
直後、信二からだと知って跳ね起きた。
こんな夜中に電話なんて考えられることはひとつしかなく、その予感が当たらないことを咄嗟に祈り、慌てて電話に出た。
「どうしたっ⁉」
「染井っ‼ 美乃が危ないって! 今さっき、実家に病院から連絡が来たらしい! 俺はこれから由加と病院に行くから!」
「……っ! 俺もすぐ行くっ‼」
電話を切ると同時に、転げるように家を飛び出した。
車のメーターはあっという間に八十キロをオーバーし、完全にスピード違反だったけれど、今はそんなことを考える余裕はなく、とにかく早く病院に行きたくてアクセルを踏み込んでいた。
ようやく着いた病院の駐車場に車を停め、必死に走った。
その勢いで病室に入ると、見たこともない光景が広がっていた。
菊川先生と何人もの看護師が美乃のベッドを取り囲み、慌ただしく走り回っている。
微かに震えながら立ち尽くす美乃の母親と、それを支えるように寄り添う彼女の父親。
「……来て、くれたんだね」
美乃の父親が振り向き、俺に気付いた。
向けられた険しい顔が、どんな丁寧な説明よりも雄弁に今の状況を物語っていたけれど……。
「大丈夫、なんですよね……? 今までだって……大丈夫、だったんだ……」
状況を飲み込めなくて、なによりも目の前の光景を信じたくなくて、必死に声を絞り出した。
それでも、今までと違うことにとっくに気付いていた。
室内は騒々しいほどうるさいのに、まるで無音の世界にいる気がする。
なにも言わない彼女の両親が、俺の望みを否定するようだった。
寝ぼけ眼で手を伸ばし、重い瞼をこじ開けるようにしてスマホのディスプレイを確認する。
直後、信二からだと知って跳ね起きた。
こんな夜中に電話なんて考えられることはひとつしかなく、その予感が当たらないことを咄嗟に祈り、慌てて電話に出た。
「どうしたっ⁉」
「染井っ‼ 美乃が危ないって! 今さっき、実家に病院から連絡が来たらしい! 俺はこれから由加と病院に行くから!」
「……っ! 俺もすぐ行くっ‼」
電話を切ると同時に、転げるように家を飛び出した。
車のメーターはあっという間に八十キロをオーバーし、完全にスピード違反だったけれど、今はそんなことを考える余裕はなく、とにかく早く病院に行きたくてアクセルを踏み込んでいた。
ようやく着いた病院の駐車場に車を停め、必死に走った。
その勢いで病室に入ると、見たこともない光景が広がっていた。
菊川先生と何人もの看護師が美乃のベッドを取り囲み、慌ただしく走り回っている。
微かに震えながら立ち尽くす美乃の母親と、それを支えるように寄り添う彼女の父親。
「……来て、くれたんだね」
美乃の父親が振り向き、俺に気付いた。
向けられた険しい顔が、どんな丁寧な説明よりも雄弁に今の状況を物語っていたけれど……。
「大丈夫、なんですよね……? 今までだって……大丈夫、だったんだ……」
状況を飲み込めなくて、なによりも目の前の光景を信じたくなくて、必死に声を絞り出した。
それでも、今までと違うことにとっくに気付いていた。
室内は騒々しいほどうるさいのに、まるで無音の世界にいる気がする。
なにも言わない彼女の両親が、俺の望みを否定するようだった。