幸せな時間は本当に過ぎるのが早くて、タイムリミットは刻一刻と近付いていた。
時間が経つに連れて、美乃の表情が少しずつ悲しみを帯びていく中、俺はせめて自分だけでもと思い、ずっと必死に笑っていた。
「そういえばさ、昨日どんな夢見たんだ?」
「夢……?」
「ああ。寝言で俺のこと呼んでたから、どんな夢だったのかと思ってさ」
「え〜っ、全然覚えてないよ」
「そうか。残念だな」
「でも、私は幸せだったってことだね!」
「どうして?」
「夢の中でも伊織と一緒にいられたから!」
彼女はついさっきまでの暗い表情とは違って、幸せそうに笑っていた。
「だったら、絶対に幸せな夢だったに決まってるじゃない」
その表情に少しだけ安堵し、美乃の頭をポンポンと撫でる。
程なくして、彼女を見つめながらおもむろに重い口を開いた。
「そろそろ病院に戻るか……」
それは、戻りたくない現実だった。
きっと、美乃は笑って頷くつもりだったんだろうけれど、一度首を縦に振り掛けた彼女が笑顔を作るのを失敗したような表情になった。
「もうちょっとだけ……ダメ?」
美乃は、縋るような目で悲しそうに訊いた。
俺だって、できることならずっと一緒にいたい。
だけど……どんなに足掻いたって、もうすぐ現実に戻されてしまう。
少しだけ考えたあと、彼女の髪に触れた。
「じゃあ、あと十分だけ」
美乃は小さく頷くと、なにも言わずに俺の腕にしがみついていた。
俺も黙ったまま、彼女の頭を撫でていた。
時間が経つに連れて、美乃の表情が少しずつ悲しみを帯びていく中、俺はせめて自分だけでもと思い、ずっと必死に笑っていた。
「そういえばさ、昨日どんな夢見たんだ?」
「夢……?」
「ああ。寝言で俺のこと呼んでたから、どんな夢だったのかと思ってさ」
「え〜っ、全然覚えてないよ」
「そうか。残念だな」
「でも、私は幸せだったってことだね!」
「どうして?」
「夢の中でも伊織と一緒にいられたから!」
彼女はついさっきまでの暗い表情とは違って、幸せそうに笑っていた。
「だったら、絶対に幸せな夢だったに決まってるじゃない」
その表情に少しだけ安堵し、美乃の頭をポンポンと撫でる。
程なくして、彼女を見つめながらおもむろに重い口を開いた。
「そろそろ病院に戻るか……」
それは、戻りたくない現実だった。
きっと、美乃は笑って頷くつもりだったんだろうけれど、一度首を縦に振り掛けた彼女が笑顔を作るのを失敗したような表情になった。
「もうちょっとだけ……ダメ?」
美乃は、縋るような目で悲しそうに訊いた。
俺だって、できることならずっと一緒にいたい。
だけど……どんなに足掻いたって、もうすぐ現実に戻されてしまう。
少しだけ考えたあと、彼女の髪に触れた。
「じゃあ、あと十分だけ」
美乃は小さく頷くと、なにも言わずに俺の腕にしがみついていた。
俺も黙ったまま、彼女の頭を撫でていた。