「今日はどうしたい?」

「う〜ん……」

「ずっと家にいてもいいけど、せっかくだからどっか行くか? 誰か誘ってもいいぞ。信二たちは仕事だけど、友達とか」

「ううん、今日は伊織とふたりがいい」

「わかった。じゃあ、なにがしたい?」

「別になにもしなくてもいいよ? 私は伊織といたいだけだもん」


無理に出掛けることはないけれど、いつもファッション誌やカフェを特集した雑誌を眺めている美乃は、きっと行きたいところがたくさんあるだろう。
外出の時には難しい場所も、今日はきっと連れて行ってあげられる。


「体調が悪いなら別だけど、遠慮しなくていいぞ? 買い物は? 今日は平日だから、たぶん空いてるだろうし」

「そうだな……。じゃあ、少しドライブしてカフェでお茶したい! それでもいい?」

「当たり前だろ。じゃあ、準備するか」

「うん!」


先に支度を済ませた俺は、美乃を部屋で待たせたまま車をアパートの前に移動させ、エアコンを入れた。
車内が温まるのを確かめてから部屋に戻り、彼女を呼びに行く。


「準備できたか?」

「うん!」


俺たちは車に乗り込み、適当に車を走らせた。


「どんな店がいい?」

「お店は決めないで、可愛いカフェがあったらそこに入る、っていうのはどう?」

「じゃあ、良さそうな店を見つけたらすぐ言えよ」

「うん!」


それから三十分くらいした頃、美乃が声を弾ませた。


「いっちゃん、あそこがいい!」

「どこ?」

「ほら、信号の傍にある青い看板のところ!」


指差された道路沿いのカフェの駐車場に車を停め、彼女と中に入った。