「エロ親父……」


美乃は悪態をつきながらも、大人しく俺の腕に捕まってくれた。
俺は、不満そうにしながらも素直に従う彼女に笑みを零し、シャンプーの香りを纏う髪や頭に唇を落としていった。


「落ち着かない……」


程なくして、美乃が振り向いて俺を見た。


「そう? 俺は落ち着くけど」

「こんな狭いお風呂にふたりで入るなんて、ありえないよ」

「その分、お前がちっこいからいいんだよ。……って、狭くて悪かったな」


再び前を向いた彼女は、いつもの膨れっ面で不機嫌そうにしていたけれど、実際はそんなに怒っていないと思う。


「ちょっとでも一緒にいたかったんだよ」


極め付けに優しく囁いてみれば、肩をピクリと揺らした美乃がゆっくりと振り向いた。


「いっちゃん……」

「伊織、だろ?」

「……うん」


彼女は困ったように微笑んだあと、大きく頷いた。


「伊織、大好き!」

「俺もだよ。やっぱりお前は可愛いな」

「そんなことないよ?」


否定しながらも、美乃の声はどこか嬉しそうだ。
無防備な笑みに幸せを感じながら、柔らかい微笑みを向けた。


「まぁ俺としては、昨日の美乃の方が可愛かったけど」


だけど、いつものようにからうと、たちまち可愛い笑顔が膨れっ面になった。


「……っ! もうっ! またそういうこと言って!」

「本当のことなんだから、仕方ないだろ」

「変態……!」


また少しだけ拗ねた彼女が可愛くて堪らず、俺はずっと笑っていた。