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翌朝、頬に触れた冷たい感覚で目を開けた。
「あっ、ごめん。起こしちゃったね」
「ん……。おいで……」
寝ぼけ眼のまま、俺の頬に触れていた手を握って美乃をゆっくりと抱き寄せる。
その瞬間、腕の中に閉じ込めた彼女の体の冷たさで、一気に目が冴えた。
「なんでこんなに冷たいんだよ!」
「大丈夫、全然寒くないもん! それより苦しいよ……」
「……いいから。このままじっとしてろ」
少しだけ苦しそうに笑った美乃を、問答無用で抱きしめる。
自分の体温を彼女に移すように、体をしっかりとくっつけた。
昨日泣き過ぎたせいで、目が腫れているだろう。
鏡を見なくてもわかるくらいの瞼の重さを隠したいのもあって、美乃を抱きしめていたのに……。
「……目腫れてるよ?」
鋭い彼女には、すぐに気付かれてしまった。
「……ねぇ、もしかして泣いたの?」
「いや、なかなか寝れなかったんだよ」
「でも、泣いたあとみたい……」
美乃に泣いたことを言うつもりはないから、納得しない彼女に悪戯な笑みを向けた。
「昨日の夜は美乃ちゃんが激しかったせいで、興奮して眠れなかったんですよ」
ニヤニヤしながら言うと、美乃がみるみるうちに頬を染めた。
「……っ、もうっ‼ バカ!」
彼女は真っ赤な頬を膨らませ、俺の頬をギュッとつねった。
「いっ、てぇっ……!」
「ちょっとは反省しなさい」
美乃は眉を寄せたあと、ぷっと吹き出した。
安堵しながら冷たい彼女の手を握り、体を起こした。
「風呂沸かしてやるから入ってこい」
「大丈夫だよ」
「いいから入れ。暖まってから飯にしよう」
俺は上半身だけ裸のままで、バスルームに向かった。