「美乃……っ、頼むから、俺を……ひとりにするなよ……っ!」


隣で眠っている美乃に、何度も何度もそう囁いた。
聞こえていないとわかっているのに、この願いが届きそうにないと心のどこかで悟っているのに、同じ言葉をずっと繰り返す。


「どこにも……行くなっ……!」


俺は唇を噛み締め、彼女の手を強く握り直した。


神様……お願いです……。
どうか、美乃を助けてください……。
俺は、美乃がいれば他になにもいらない……。
すべてを捨てても構わないとさえ、思えるんだ……。
でも、美乃だけは絶対に失いたくない……。
たとえどんな形でも、ずっと生きていてほしい……。


とにかく、誰かに縋り付きたくて。誰でもいいから、美乃を助けてほしくて。
人の手ではどうすることもできないのならと、信じてもいない神様に心の中で何度も何度も願った。


自分でもバカだと思う。
それでも、止まらない涙と例えようのない悲しみはいたずらに蓄積していくばかりで、無防備な俺の心をグチャグチャにした。


声を堪えながら雫で顔を濡らし、子どものように鼻を啜った。
喉の奥から込み上げる熱を痛いくらいに感じながら、心の中では願いをずっと叫んでいた。


自分でも、もうなにを考えているのかほとんどわかっていなかった。
覚えているのは、美乃の頬に触れながら何度もそう願ったということだけ。


目を離すのが恐くて、滲む視界の中にいる彼女の寝顔を見つめていた。
そして、朝方になってようやく落ち着き始め、頭の中が白んでいくのを感じながら眠りに就いた――。