ああ、俺はなんてひどい奴なんだろう……。
美乃の願いが、こんなにも嬉しいなんて……。


「……俺、止まらないぞ?」


美乃を相手に理性が切れたら、絶対に抑えられない。
理性と本能の狭間で戸惑う俺の唇を、彼女がもう一度そっと塞いだ。


少ししてから唇を離した美乃は、涙で濡れた瞳を揺らした。


「抱いて……」


戸惑いはあるけれど、その願いを叶えてあげたいのはもちろん、俺だって彼女を抱きたい。
だから……もう、迷わない。


俺は、美乃の頬に触れながらゆっくりと顔を近付けて唇を塞ぎ、それから彼女の口腔に舌を忍ばせた。
それはいつもよりも甘くて、だけどどこか切ないキスだった。


唇を重ね合わせながらベッドに倒れ込み、俺たちはお互いを求め合った。
髪を撫でながらキスを交わし、唇を少しずつ美乃の首筋に移していく。


徐々に熱くなっていく体が彼女の吐息を敏感に感じ取り、心臓が破裂しそうだった。


「いっちゃ、ん……」

「美乃……。もっと、俺のこと呼んでよ」

「いっ、ちゃ……んっ……」


途切れ途切れに俺を呼ぶ美乃の声が、妙に安心させてくれる。
切なくて苦しくて堪らないのに、甘い声で名前を呼ばれると泣きたくなるのに……。心は、優しい温もりに包まれる。


「美乃……。俺の名前、呼んで……」

「い、おり……?」


途切れ途切れに囁かれた、自分の名前。
世界中で一番愛する人の声で呼ばれるだけで、張り裂けそうな心が癒されていく。


「ずっと……俺のこと呼んでて……」

「伊織……っ! いお、り……」


美乃の甘い声に何度も呼ばれながら、無我夢中で彼女の全身にキスをした。