「お揃いのシャンプーだね! いい匂いがする! この部屋もいっちゃんの匂いがして幸せ〜」

「どんな匂いだよ……」


なんとなく複雑な気持ちで苦笑すると、美乃が小首を傾げた。


「う〜ん、なんか落ち着く感じ! 幸せの匂いかな」


彼女の言葉にくすぐったくなった俺は、照れ臭さを隠すようにバスルームに逃げた。
湯舟に浸かりながら必死に平常心を取り戻して落ち着こうと試みるけれど、どうしても平常心を保てない。


やっぱり美乃には敵わないな……。


お風呂から上がると、待ち侘びていたらしい美乃が笑顔を見せた。


「いっちゃんの髪は、私が乾かしてあげるよ!」


ドライヤーのスイッチを入れた彼女に体を預けると、触れられた部分から少しずつ心地好くなっていった。
俺は目を閉じながら、髪が乾くのを待っていた。


「いっちゃんがお風呂に入ってる間に、家とお兄ちゃんに電話しておいたよ」

「なにか言ってたか?」

「パパとママには、いっちゃんに迷惑掛けちゃダメって言われた! お兄ちゃんは、いっちゃんによろしくって」


美乃は嬉しそうに笑って、弾んだ声で話を続けた。


「クリスマスの夜に、いっちゃんと一緒に過ごせるなんて夢みたい」

「でも、俺プレゼント用意できなかったんだ……。ごめん……」


本当は用意するつもりだったけれど、最近は病院に通い詰めでそれどころじゃなかった。
申し訳なく思う俺を余所に、彼女がふわりと微笑んだ。


「もうもらったよ?」

「えっ?」

「ケーキと料理に、お揃いのシャンプーの匂い。それと今も!」

「今?」

「うん! 私、今が一番幸せだもん!」


幸せそうに破顔する美乃が、俺の頬に軽くキスをした。
俺たちは、微笑み合いながらそっと顔を近付けてお互いの唇を優しく塞ぐと、相手を確かめ合うような深くて甘いキスをした。