「すまないね、染井君。美乃を頼んだよ」

「はい!」

「なにかあったら、いつでも連絡してね。もちろん、早朝でも夜中でも構わないから」

「わかってます」


美乃の両親は、嬉しそうに笑いながらもどこか心配そうにしている。
俺は、ふたりを安心させるために「なにかあれば必ず連絡しますから」と告げた。


「大丈夫だよ! 私、すっごく元気なんだから!」


美乃は、俺たちを見ながら得意げに笑った。


「はいはい」


俺は笑顔で頷き、彼女の両親もニコニコと笑っていた。
大通りを走り抜け、閑静な住宅街に入った。


「着きましたよ。美乃も中に入ってくるだろ?」


美乃の家の前で車を停めると、彼女の両親が後部席から降りた。


「すまないね、ありがとう」

「じゃあ、美乃をお願いね」

「はい」

「ねぇ、いっちゃんも入っていけば? 私の用事はすぐに終わるけど……」

「いや、ここで待ってる。それとも、あとで迎えに来ようか? せっかくだし、家でゆっくりしていけば?」

「ううん、すぐに戻るから待ってて!」


美乃はそう言い残し、久しぶりの自宅に入った。
それから十分もすると、彼女が家から出てきた。


「もういいのか?」

「うん! だって、外出の時もよく帰って来てたもん!」

「もっとゆっくりしていいんだぞ」

「いいの! それより、早く行こうよ!」


美乃は満足そうだったけれど、俺は彼女の両親に対して申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
だけど、美乃に急かされてしまい、あとから出てきた彼女の両親に頭を下げてから車を出した。