「今年のクリスマスも病院かな……。それとも……」


美乃は小さく呟いて、しばらく黙り込んでいた。
彼女の髪を撫でながら、できるだけ暗い雰囲気にならないように「それとも?」と優しく促してみた。


「クリスマスには、もう死んじゃってたりして!」


振り向いた美乃は、明るい声で言った。
その瞳には、たくさんの涙が溢れている。


「死なないよ。クリスマスは俺と一緒に過ごすんだろ? それにイヴは出会って一年だから、そのお祝いもする約束だろ?」

「無理だよぉっ……! 熱だって、全然……下がらないし……っ!」

「そんなこと言うな。信二にも怒られるぞ?」

「だっ、て……恐いんだもっ……!」


美乃は、とうとうしゃくり上げて泣き出した。
俺はどうすることもできず、彼女が泣き止むまでただ抱き締めて待っているだけだった。


「いっちゃん、あたしね……本当にもう長く生きられないと思う……」

「そんなこと言うなよ……」

「ごめんね……。でも、聞いてほしいの……」


ゆっくりと体を離した美乃は、涙で濡れた顔で悲しげに微笑んだ。
彼女の表情に目頭が熱くなって、今度は俺が泣き出してしまいそうになる。


「私ね……前にも言ったけど、なにもやり残さずに死にたいの……。だから、これからいっぱいわがまま言ってもいいかな……?」

「わがまま……?」

「うん。私のお願いはね、いっちゃんだけにしか叶えられないの……」

「……俺だけ?」

「うん! だから……私のわがまま、聞いてくれる?」


美乃が悲しそうに微笑み、だけど曇りのない瞳で俺を真っ直ぐ見つめた。
きっと、彼女は自分の死を受け入れて、残りの人生を精一杯生きようとしている。


それを理解できても、美乃の願いはあまりにも悲しいものだった。