『美乃、どうだった? 今朝行ったら、かなり体調悪そうだったんだよ……』


信二は開口一番、不安げな声で言った。


「今はマシみたいだ。昼飯もほとんど食ってたよ」

『そっか、良かった。お前のおかげだな。美乃はお前がいると、元気になるから』

「そりゃどうも……」


買ってきた弁当を出しながら、できるだけ冷静に切り返した。
だけど、信二の言葉が本当に嬉しくて、内心はくすぐったさでいっぱいだった。


顔が緩みそうになるのを我慢して、とにかく箸を動かす。
鏡を見なくても、顔がニヤけているのがわかった。


『それでさ〜……俺、つい言っちゃったんだけど……』


そんな俺を余所に、信二が遠慮がちに呟いた。


「誰になにをだよ?」

『お前の仕事のことを、うちの親に……。でも、やっぱりまずかったよな? ごめん!』

「別にいいよ。どうせ俺から言うつもりだったし」

『そっか……。それでさ、親がお前と話したいって……。お前、今どこ?』

「わかった。今は家だけど、飯食ったらまた病院に行くよ。お前も夜には来るんだろ?」

『ああ、仕事が終わったら親と行くつもりだよ。じゃあ、あとでな』

「ああ」


美乃の両親のことを考えると少しだけ不安になったけれど、いずれはちゃんと話すつもりだったから手間が省けたと思うことにした。
どうせなにを言われても意思を曲げるつもりはないから、不安になっても仕方がない。


弁当を平らげたあと、再び病院に向かった。
病室に行くと、美乃はシャワーを浴び終えて髪を拭いているところだった。


「シャワーなんか浴びて、大丈夫だったのか?」

「うん、先生がいいって」

「そっか。貸して」

「じゃあ、お願い」


確かに、顔色はよくなっているようだ。
俺はタオルを受け取って、彼女の髪を拭いた。