「ううん、大好き」


美乃は照れ臭そうに微笑んだあとで、それを隠すようにペロッと舌を出して見せた。
やっぱり、彼女は俺の心を捕らえて離さない。
俺は美乃の頬にキスをして、耳元でそっと囁いた。


「愛してる」


すると、彼女がギュッと抱き着いてきて、俺の頬に自分の頬を寄せた。


「私、本当はね……いっちゃんが仕事を辞めてくれて、すごく嬉しいの……。ひどいでしょう? ごめんね……」


俺からゆっくりと離れた美乃は、悲しげに瞳を伏せた。


「バーカ、最高の彼女だよ! だって、美乃に愛されてるってことだろ」


柔らかい笑みを浮かべ、彼女の唇に優しくキスをする。


「ありがとう……」

「ほら、早く横になれ」

「手、繋いでて?」

「ああ」


美乃はベッドに横になると、怖ず怖ずと右手を差し出した。
俺が手を繋ぐと安心したのか、彼女はすぐに瞼を閉じて一時間ほど眠った。


「ん……。いっちゃん……?」

「起きたか。もうすぐ昼飯だけど、食えそうか?」

「さっきより気分もいいし、ちょっとくらいなら食べれそうかな……。それより、もしかしてずっと手握っててくれたの?」

「寂しがり屋の美乃が、寂しくないようにな」


優しい笑みを向ければ、美乃が嬉しそうに瞳を緩める。
程なくして、内田さんが昼食を持ってきてくれた。


「無理するなよ?」

「大丈夫! さっきより元気だもん」


美乃は笑顔を見せながら食事を始め、時間を掛けながら箸を進めていた。
最終的にはほんの少し残しただけで、ほとんど完食に近かった。


ホッとしながら食事を下げ、一度家に帰ることにした。
帰宅するのとほぼ同時に、信二から電話が掛かってきた。