面会終了時間が迫っていたこととあまり汚れていなかったことで、今日はその足で病院に向かった。
病室に行くと、いつものように信二と広瀬が来ていた。


「昨日はお疲れ。お前ら、いつ来たんだ?」

「私は今さっきよ」

「俺は夕方からここにいるけど、美乃はずっと寝たままなんだ。しばらくは起きないかもな……。起こすか?」


控えめに訊いた信二に、首を横に振った。
美乃と話したいけれど、今はできるだけゆっくり寝かせてあげたい。


「コーヒーでも買ってくるよ」

「ああ」


美乃を起こさないようにロビーに行った俺は、自動販売機でコーヒーを買って、あとから来た信二と広瀬と同じ椅子に座った。
ふたりにコーヒーを渡して一口飲むと、ホットコーヒーから伝わる熱が冷え切った体を温めてくれる。


「ねぇ、染井。それ、どうしたの?」


ホッと息をついた直後、広瀬が俺の額を見ながら訊いた。


「……ちょっとな」

「なによ、それ」


広瀬は怪訝な顔をしながら、俺のことを見ていた。
今はまだ言いたくなくて、苦笑で濁す。


「まぁいいだろ」

「喧嘩でもしたの?」

「してないって!」

「……そうよね」

「当たり前だろ! 染井が喧嘩なんてするわけないだろ!」


見兼ねた信二も、わざとらしいくらいに明るく口を挟んだ。


「目立つわよ、そのおでこ……」


広瀬は諦めたのか、それ以上はなにも訊かずにコーヒーを飲んでいた。
いずれは言うつもりだけれど、とりあえず詮索されなかったことに胸を撫で下ろす。


信二はともかく、広瀬は反対するに決まっている。
それから一時間ほどロビーで過ごし、面会時間が終わる頃にもう一度病室に行った。