「ここ、は……?」
気が付くと視線の先には見覚えのある真っ白な天井があった。
「翼!! 気が付いたのね!?」
「翼!!」
「よかった……」
すぐ隣には目に涙を浮かべたママと……真っ青な顔をした徹ちゃんと昴の姿があった。
「ママ……? それに……徹ちゃんに昴も……」
「お前が倒れたっておばさんに連絡が入って…心配したんだからな……」
「徹ちゃん……」
「……ごめん」
「昴……?」
「俺が一緒に帰ってれば……」
そんな顔しないで、と言う私の声なんて耳に入っていないようで……。
「とにかく無事でよかったわ……。心臓の方に異常はないみたいだけど……。どうする?一泊していってもいいって先生はおっしゃってたけど……」
「大丈夫……。帰るよ」
身体を起こしてみるけれど特に違和感はない。
さっきまでの苦しさが嘘みたいだ。
そういえば……。
「ねえ、ママ?」
「なあに?」
「その…私が倒れた時…誰かいなかった…?」
「通りすがりの方が救急車を呼んでくださったみたいよ。お礼をしたかったんだけど、ママが病院についたときにはもういらっしゃらなくて」
「そっか…」
あの人の事を考えると……何故だか胸が締め付けられるように、痛い。
「その方がどうかしたの?」
「ううん、私もお礼を言いたかったなって思って」
たった一度。
それも意識を失うまでの数分間だけの出会い。
なのに、こんなにも胸が苦しくて
こんなにも心臓が痛い。
名前も知らないあの人は…いったい誰だったんだろう。