「翼ちゃん、君は今から元気になるんだよ」
手術着を着た先生が私に言う。
私は今、冷たいベッドの上に寝かされていた。
「次に目が覚めた時には、君のここには違う人の心臓が入っている」
「違う人の……?」
「そう。誰かの心臓が君を生かそうと動いている。君が……誰かの命を繋ぐんだ。翼ちゃんの一部分として」
麻酔で朦朧とし始めた頭では先生が言っている言葉の半分も理解できない。
誰かの命を繋ぐ。
それがどういう意味なのか、考えたいのにどんどん……意識が……なくなっていく……。
もう何も考えられなかった……。
けれど、先生の言った言葉は、手放しかけた意識の奥でずっと響いていた。