そして――その時は、唐突にやってきた。

「翼!! 助かるのよ!! あなたは元気になるのよ!」
「マ、ママ?」

 涙を浮かべながらママが病室に飛び込んできたのは、今回の入院期間も3か月が過ぎようとしていたある晴れた日の事だった。

「おばさん、それじゃあ……!」
「そう、移植が決まったの!」

 ベッドの隣に置いてある椅子に座っていた徹ちゃんが立ち上がった拍子に、椅子は大きな音をたてて倒れた。

「翼……! よかったな! 翼!!」
「え、よく分かんないよ! 助かるって……どういうこと?」
「もう入院なんてしなくてよくなるんだ! みんなと一緒に学校に行って思いっきり走り回ることだって出来るんだ!」
「ホントに……?私ホントに……?」
「ああ!」
「ええ!」

 ママと徹ちゃんが泣いている。ドアの向こうでパパが優しい笑顔で私を見ている。みんなの姿を見て……夢じゃないんだと、これは現実なんだと――私は初めて、みんなの前で声を上げて泣いた。