ある日、いつもと同じように河川敷に向かうと苦しそうな顔をした片岡さんがいた。
何を話しかけても上の空で……握りしめた手も、握り返されることはなかった。

どう、したのだろう……。

「片岡さん……」
「ごめん、翼ちゃん……」

そう言ったっきり、彼は黙り込んでしまう。
どうしていいか分からなかったけれど……一人にすることも出来なかった。
結局私は黙ったままの彼の隣に座り続けた。

どれぐらいの時間が経っただろう。
夕日が沈み始める。
――そろそろ帰らなければ。
そう伝えようとした瞬間、片岡さんが私の名前を呼んだ。

「翼ちゃん」
「は、はい!」
「――明日って、暇かな」
「明日、ですか……?」

明日は土曜日で特に何も用事は入っていない。
大丈夫です、と言おうとした私を遮って片岡さんは口を開いた。

「もし忙しかったらいいんだ。でも――もしも、もしも時間があるのなら……翼ちゃんの明日を、俺にくれないかな」
「え……?」
「……一緒に、行ってほしいところがあるんだ」

そう言った片岡さんの表情は真剣で――わかりました、と告げることしか出来なかった。