放課後、久しぶりに私は河川敷へと向かう。あの人に――片岡さんに会うために。
来て、いるだろうか……。
「いた……」
あの日と同じように、いつもの場所に、彼はいた。
「翼ちゃん」
そう言って私の姿を見て、彼は微笑む。
そんな彼に私も微笑み返す。
これでいい。
こんな風に彼の隣で笑えるのであれば――いつまでだって待てる。
彼が、忘れられない彼女を、思い出に変えることが出来るその日まで――。
それから毎日、私は河川敷へと向かった。
他愛のない話を繰り返す。でも、そんな時間が幸せだった。
けれど――ふとした拍子に彼が見せる、寂しそうな表情、苦しそうな表情。
それを見るたびに、胸が締め付けられるように苦しくなった……。
「忘れてしまえば楽になれる」そう言うのは簡単だった。でも……忘れたくても忘れられない、それは多かれ少なかれ誰にだってあることだから……。
「片岡さん……」
「翼ちゃん」
そんな時は、そっと……彼の手を握りしめた。
忘れられないのなら――その痛みごと、私が包み込んで揚げられれば……。
彼は「ごめんね」と苦しそうに笑うと……ぎゅっと、私の手を握り返してくれる。
二人で燃えるような夕日を見つめ続ける。まるで――その夕日の向こうに、まだ見ぬ彼の忘れられない人がいるかのように……。