いってきます、と声をかけると私は家を出た。片岡さんが来てくれた翌日、長々と休んでいた私は久しぶりに学校へと行くことにした。

「あと1日でも遅かったらパジャマのまま連れて行こうかと思ってたのよ」

そう言ってママは笑っていたけれど――少し心配そうな表情をしていた。

「久しぶりに外に出ると――暑い……」
「おはよ」
「昴!」

太陽の光にくらっとしていると、いつの間にか昴が門の前に立っていた。

「今日から行くって聞いたから」
「そっか、ありがとう」
「別に――」

相変わらずそっけない態度。でも、優しさが伝わってくる。

「あ……」
「おはよ」
「おはよう――徹ちゃん」

昴の後ろには、徹ちゃんの姿があった。あの日以来、徹ちゃんに会うのは初めてで――少し気まずい……。でも、そんな私の気持ちを見透かしたように徹ちゃんは笑う。

「翼も乗ってくだろ? 今日は外を歩くには暑いぞー」
「……徹ちゃん」
「兄ちゃんもこう言ってるし、車で行く?」
「そう、だね」

今まで通り、いつも通り。
そんな徹ちゃんの態度が、嬉しくて――少し胸が痛む。

「そんな顔するなって」
「昴……」
「なんも気にしないで笑ってればいいんだよ。そんな翼が兄ちゃんも――俺も、好きなんだからさ」
「――ありがと」

ふん、とそっぽを向いてしまう昴にお礼を言うと――私は、徹ちゃんの車に乗り込んだ。――いつものように、徹ちゃんの隣の助手席に。