「あ……」

気が付いた時には、部屋にはもう誰もいなかった。
ベッドの傍の携帯には「風邪ぶり返さないように」と、徹ちゃんからのメッセージが届いていた。

こんな時でも、自分のことより――私のことを気にしてくれる……。
そんな優しい人を――私は傷付けた。

「徹ちゃん……」

でも、それでも――。

「ごめんね、徹ちゃん……」

それでも、私は――あの人のことが……。

「片岡さん……」

名前を呟くと胸が痛む。
それでも、あの人のことを想わずにはいられなかった。