その後のことはよく覚えていない。彼が何か言っていた気はするけれど……私はそんな彼の言葉を遮ると、駆け足で自宅に戻った。
帰ったの?と尋ねるママの声を無視すると、部屋に閉じこもって――泣いて泣いて泣いて……気付けば夢の中だった。

夢の中の私は、片岡さんの隣で笑っていた。幸せそうに。
でも、そんな片岡さんを綺麗な女の人が連れて行く。二人は――とてもお似合いだった。

「片岡さん……」

あの人の名前を呼ぶ。けれど、彼は私の声に振り返ることはなく――背を向けて歩いて行ってしまった。

「片岡さん……」

夢の中で泣きながら彼の名前を呼ぶ私の手を、誰かが優しく握りしめてくれた――そんな、気がした。