「ホント最悪なんだけど」
「で、でも仕方ないし……」
「翼は――」
「私はこの前の件で病院からNGが出てるから……」
「だよね」

 はぁーと大きなため息をつくと、隣を歩く昴は嫌そうに言う。

「俺も当日だけでいいんだけど」
「うーん……」
「と、いう訳にもいかないしね。翼、明日からしばらく一人で帰れる?」
「え?」
「本当は昨日のこともあるし嫌なんだけど……でも、練習が終わるまで待たせる訳にもいかないし……。あ、そっか。兄ちゃんに言えば球技大会までなら――」
「大丈夫だよ!」

 他の手を必死で考えようとしてくれる昴の言葉を遮ると、私は元気よく言った。

「あの日からずっと発作も起きてないし、昨日のもホントすぐ治まったから、家までぐらい一人で帰れるよ!」
「そうかもだけど、でもなぁ……」

 それでもやっぱり心配らしく、昴はでも……とかやっぱりとか言いながら悩ましげに宙を見上げる。そんな昴に私は言葉を重ねた。

「それに……」
「ん?」
「そろそろ元の生活に戻らないと、さすがに申し訳ないよ」
「翼……」

 一ヶ月以上もこうして朝も帰りも昴は一緒にいてくれている。友達と遊ぶこともなく、ずっとだ。そんなの――対等な関係とは言えなくて。

「本当にもう大丈夫だよ。ありがとね、昴」
「翼がそう言うなら――。でも、何かあったらすぐに言えよ! 俺も兄ちゃんもいるんだから」
「うん、本当にありがとう」

 昴の言葉が有り難くてお礼を言う私に昴は、別に――と少し照れくさそうにそっぽを向いてしまう。子どもの頃から今まで、ずっとずっと私を守ってきてくれた昴と徹ちゃん。二人には感謝してもしてもしたりない。だから余計に――元気になった今は二人から離れなきゃって思ってしまう。いつまでも、二人の傍で二人に甘え続けるわけにはいかないのだから……。