「アリスだ!」
 わかっていなかった鳥たちが声をそろえる。
 それを聞いてエリカは胸が躍った。
「アリス? 不思議の国の? 私の名前の文字を入れ替えると、アリスになるんだ!」
 嬉々としてエリカが言うと、その通り、と白鳥先生。でも白鳥先生の表情は決して明るいものではない。真剣そのものだった。
「エリカ君、聞いてくれるかね。みんなも静かにするように!」
 鳥たちは――あの偉そうな鶏も、みんなと一緒になって騒ぐだけのホオジロも――口を閉ざした。
「僕たちはいつも――それこそもう何年も、何十年もこの庭で授業をしている。ある一人の女の子の登場を待ちながらね」
 何年も、何十年もですって?
 エリカは耳を疑った。普通ならそれだけ長い間いれば卒業しているわ。
「一人の女の子?」