手記はそこで途絶えていた。



 キャンパスノート数ページに渡るその記録は、淡々とした文体にも関わらず、書き手の悲痛な思いを、私の胸にひたひたと伝えてくる。



 私はノートを机上に丁寧に置いた。



 記憶消去師――否、嫌なことイレーサーとして特殊な力を持ち、荒稼ぎし、人を愛せなかった書き手の数奇な運命に、私は心を痛める。



 ぽとり。



 気づけば私は涙を流していた。

 どうして?

 誰のものかわからぬこの手記の書き手に、どうして私はこれほどまでに心打たれるのだろう。

「彼女」を愛したかったのに愛しきれなかった可哀想な書き手に、同情したから?



 なぜか自分のことのように感じる。

 でもこんな経験をした覚えは私にはない。

 私は、彼ではない。



 私は――。