十七時過ぎに帰宅すると、いつものようにツキが出迎えてくれた。


ツキは基本的に私の部屋で過ごしているけど、私が出掛ける時には玄関まで見送ってくれ、帰って来た時には朝と同じところに座っている。


懐き始めた頃から私が家にいる時には私のあとを追うようになり、私が出掛ける時には引き止めるようにして玄関まで付いて来ていたことが、この行動を取るようになったきっかけなのだと思う。


私が帰宅する時は、恐らく門扉を開けた音で気づいて下りて来るのだろう。


小学生の頃から鍵っ子だった私は、ツキが来るまでは帰宅した時に家族に出迎えてもらえることなんて数えるほどしかなかったから、ツキの行動はとても嬉しかった。


ツキの言葉はわからないけど、それでもなんとなく求めているものはわかっているつもりだし、なによりも私のことを必要としてくれている。


出会った頃は警戒心を剥き出しにしていたのに、今ではすっかり健気で甘えん坊なのだ。


「ただいま、ツキ」


「ニャア」と鳴いたツキの頭を指先で軽く撫でると、ツキは気持ち良さそうな顔をした。


「ごめんね、今日はあんまり時間がないんだ」


ツキを抱いて自室に行き、すぐに塾の用意を済ませ、再びツキを抱いてリビングに下りた。