一軒家にひとりで過ごしていると心細くなる時もあるけど、ツキがうちに来た日からそんな気持ちも少しずつ減っていった。


拾った時に右前足に傷を負っていたツキは、私が家に連れて帰る間は警戒心を出しながらも段ボール箱の隅にいるだけだった。


両親を説得したあとで汚れた体を拭こうにも今にも噛みつきそうなほど怯えているツキに手を伸ばすことはできなくて、あの日は心配でたまらないながらも段ボール箱の隅に水の入った器を置き、そのまま一夜を明かした。


当時は登校拒否気味だった私は、翌朝早くに地元の動物病院に連れて行った。


私は警戒心を剥き出しにしているツキを段ボール箱から出すことができなかったけど、獣医さんは難なくそこから出して診察をしてくれた。


右前足の傷は恐らく野良猫にでもやられたのだろうという診断で、推定年齢は七歳。


そして、予想通り衰弱していると言われ、看病のためのノウハウや必要なものを教えてもらって帰宅した。


最初のうちはもちろんツキの警戒心が解けることはなく、数日経つ頃にはきちんとご飯を食べてくれるようにはなったけど、ボロボロの段ボール箱から出ることをひどく嫌がっていて……。


私は受験勉強の傍ら、ツキと根気良く向き合うことにした。