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翌日の七月二十日は、人生で一番憂鬱な気持ちで迎えた誕生日だった。


昨夜は早々にベッドに入ったのに寝つけなくて、いつもはお気に入りのクッションで眠るツキが珍しく私の隣に来たから、ツキの体を優しく撫でながらその姿を見つめていた。


規則的な寝息を立てて眠るツキをぼんやりと見ながら考えるのは、クロのことばかり。


彼と出会ってからたったの一ヶ月だけど、人生で一番目まぐるしく色々な気持ちを味わった日々は、思っていたよりもずっと思い出が詰まっていたことに気づいた。


せめて泣かないようにしたいと決意を抱きながらも、クロと離れなくて済む方法を模索してしまう。


無駄な足掻きだとわかっているのに少しでも一緒にいたくて、どんな言葉なら彼の心を動かせるのだろうかと考え続けた。


それなのに……。


辿り着いたのはその答えでなく、自分がやりたいと“思えた”こと。


どんなに悩んでも欠片も見つからなかったのに、こんなタイミングで初めてそれを見つけてしまったのだ。


できるかどうかは、わからない。


なによりも、私には向かないことだというのは誰よりもよくわかっているけど、それでも十八歳の夜明けとともに見えたのは明るい空と“やりたいと思えること”だった。