「雨宿りできるところに行こう」


「あ、うん」


頷いた私が立ち上がってクロの後を追おうと足を踏み出した直後、降ってきたばかりの雨がサーッと音を立て始めた。


「うわっ! 千帆、急ぐぞ!」


「えっ? ……ちょっ⁉︎」


彼の言葉を理解するよりも早く掴まれたのは左の手首で、目を見開いた私は戸惑い慌てたけど、そのまま引っ張られてしまったせいで抵抗する暇もなく走り出すしかなかった。


あっという間に強まっていく雨の中、風を纏うようにして走る。


クロの背中を追うことに必死で、少しずつ息が上がっていくのに、掴まれた手を引っ込めることはできなかった。


「ほら、千帆。早く」


滑り台の下にある、土管のような穴。


雨の日にはいつも利用するその場所に入るように促した彼は、私の手を離して背中を押した。


返事もせすに体を屈めて中に入り、四つん這いの姿勢で少し進んだところで止まって体勢を変える。


後ろから入ってきたクロも体勢を変えたけど、子ども用に設計されている土管の中はゆったりと座れるようなスペースはなく、体を少しだけ丸めるようにするしかない。


彼とここに入るのは何度目かわからないけど、気をつけなければ頭を打ちそうだと思うのは毎回のことだった。